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走れ!バカップル列車 第89号 えちごトキめき鉄道の国鉄形観光急行 |
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三 「蓮の花がきれいだと思うよ」という大塚さんに案内されて、四人で高田城址公園にでかけた。 高田城は江戸初期に築城され、以来高田は高田藩の城下町として栄えたらしい。お城は高田駅から東へ歩いて十分ほどのところにある。お城の周りには大きなお堀があって、道ばたには蓮の花が咲いた大きな鉢がいくつも並んでいる。それぞれに蓮の種類の名前が書いてあって、ひとくちに蓮といってもこんなにも違いや種類があることに驚く。 外堀には蓮の葉が一面にびっしりと浮かんでいる。お堀を東西に渡る朱色の欄干の橋があるので渡ってみる。大塚さんが左右を見てボソッと「咲いてないなぁ」。たしかに蓮の葉は一面に広がっているが、花の咲いてる蓮がない。みつこさんが「暑いね」と音を上げた。なにしろ今日、梅雨が明けたのである。天気は良くて日差しは強い。橋の真ん中あたりで引き返すことにした。 お堀端に貼ってあるポスターを見たら「第42回高田城址公園観蓮会 令和3年7月17日(土)〜8月22(日)」と書いてあった。 「明日からなんじゃん」「ちょっと早かったんだね」などと口々に言いながら、また「Digmog Coffee」に戻ってきた。こんどはアイスレモネードをいただいた。私たちが立ち寄るたびにイケハタさんには面倒をかける。 夜になった。待ちに待った「雁木亭」である。お店は街中を南北に流れる小さな川から一本線路側の高田のメインストリートと呼ぶべき通り沿いにあった。立ち並ぶ華やかな飲食店の前にはそれぞれに歩道を覆う屋根がついていて、まさしく雁木の通りである。私たちはあちこちきょろきょろしながら歩いたが、まっすぐ歩けば高田駅から七、八分のところだ。 扉を開けると店内はほぼ満席の大盛況。大塚さんご一行はすでに奥の小上がりにいた。私たちも混ぜてもらい、まずはビールで乾杯。割り箸に手を伸ばせば、箸袋には「ウェルモ」くんが描かれている。「えっ、ここにもイラスト描いてんだ!」と驚く。「まあね」。ちょっと得意げな巨匠の笑顔。 お通しはインゲンとこんにゃくのゴマ和え、自家製かまぼこ。そこからしてうなるおいしさだ。刺し盛りは鯵のたたき、鯖、タコ、なんの魚か忘れてしまったが白身のお魚二種と貝にカニ味噌が載ったものが食べきれないくらい並んでいた。 名物だと勧めてもらったのが「のっぺ」というもので、里芋、にんじん、こんにゃく、椎茸などの煮物にあんがかかっている。あんかけの筑前煮みたいなイメージだ。サメかつもおすすめでいただいた。サメはなかなか食べる機会がないが、弾力があって食べ応えがあった。 私たちが三人で押しかけたので、小上がりのテーブルに座りきれなかったウタちゃんはカウンターに追いやられてしまった。カワムラさんが来た料理を先にウタちゃんに数切れ渡したり、テーブルのお皿に残った一切れをウタちゃんに片付けてもらったり、なにかと気を遣っている。いつもはカワムラさんのほんわかしているところばかり目にしているので、細やかな心配りをテキパキとこなす姿が頼もしい。 その後は、大塚さんが飲み始めている日本酒を分けてもらったこともあって、だいぶ酔っ払ってしまい、どうも記憶が曖昧である。とにかく気分良く飲んで食べて、ふらふらと宿に戻ったに違いない。 翌七月一七日、バカップル+バカ妹の増結編成三人組は、朝10時過ぎに高田駅に着いた。「Digmog Coffee」と「雁木亭」の見学に行くという本来の使命は昨日のうちに達成したので、今日はあくまでついでの行程である。いちおう大塚さん、カワムラさん、ウタちゃんにも声をかけたのだが、鉄道の旅にはあまり興味がないらしい。増結するのは昨日と変わらずバカ妹だけとなった。 このあと高田駅からえちごトキめき鉄道妙高はねうまラインに乗って直江津に出て、直江津からはえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインの「急いで行かない観光急行」に乗る。「急行」はトキ鉄終点の市振行きだが、私たちは途中駅糸魚川まで乗車の予定である。 窓口で三人分のきっぷを買う。高田から糸魚川までの普通乗車券、「観光急行」の車輌455系、413系の写真をあしらった記念乗車券・急行券を二種類買った。ささやかではあるが、少しでも増収に貢献したい。 発車時刻が近づいたので改札口を入る。直江津方面ののりばは橋を渡った向こう側である。しばらく待つと明るい小豆色とベージュのツートンカラーの電車が三両編成でやって来た。これこそが敏腕社長鳥塚亮さんがこのたび買入れ、整備した「観光急行」用の三両編成である。土・日・祝は「観光急行」が走る前の時間帯に、快速列車として直江津〜妙高高原を一往復する。みつこさんと妹ゆかは「昔、こんなの走っていたねぇ」と言いながら乗っている。 快速列車は高田10時26分に発車、隣の春日山を通過する。終着直江津は、えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン、日本海ひすいライン、JR信越本線が合流する交通の要衝である。広い構内に線路が複雑に入り組んでいる。分岐器をいくつも渡るので、列車は駅の手前で充分に減速し、ゆっくりとホームに滑り込む。10時35分、定刻に直江津駅一番線に到着した。 この電車がこのあと11時26分に発車する「観光急行」になる。停車中もこのまま乗っていたいなと思ったが、車内清掃をするので全員いったん降ろされた。しかたないので運転席のところに来てみると、乗務員がヘッドマークをつけている。きょうは「ひめかわ」だ。ほかにも「越後」「妙高」「赤倉」など旧国鉄時代の愛称が用意されている。電車の顔を入れて三人で記念撮影。撮り終わるとみつこさんと妹ゆかはトイレに行ってしまった。 ホームは名物車輌目当てにやって来た人たちであふれている。広い直江津駅でここだけに人が集まっている感じである。乗客の整理に来た駅員や乗務員の表情もどことなく誇らしげだ。ピンクのアロハシャツを着たおじさんがこの光景を熱心にビデオカメラで撮影している。ひょっとしてと思い、密かに顔を覗いたらやはり鳥塚さんだった。なんの面識もない一鉄道オタクが声をかけたところで迷惑がられるだけだからそっと見守るだけだったが、社長自ら休日返上して現場に来ているとはさすがである。 |
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