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走れ!バカップル列車 第89号 えちごトキめき鉄道の国鉄形観光急行 |
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二 このたびの「Digmog Coffee」訪問は、みつこさんだけでなく、大塚さんのイラストのファンである妹ゆかまで行きたいと言い出したので、ひさびさにバカップル+バカ妹の増結編成での運転である。妹ゆかの増結運転は第二号箱根登山電車以来だからじつに十七年ぶりだ。 二○二一年七月一六日、三人で東京駅に行って「はくたか561号」に乗り込んだ。平日だし、東京が始発駅だからそれほど混んでいないだろうと思い、二号車の自由席にした。思った通り、三人並んだ席を自由に選ぶことができた。ふだんは忌まわしいとしか感じない新幹線の三人席(A席・B席・C席)もこんな三人組のときは重宝するものである。 定刻11時24分に「はくたか561号」は発車した。窓には絵に描いたような夏空が広がっている。この時季にしては珍しいと思っていたら、この日関東地方は梅雨明けしたと後のニュースで知った。 まだ昼前というのに早速お弁当を食べる。みつこさんは「やまゆり牛しぐれ煮弁当」。蓋を開いて思ったよりお肉が少ないと不満げである。妹ゆかは最後まで悩んだ「ひっぱりだこ飯」。蛸壺みたいな陶器に入っている。壺だと食べにくそうだがおいしそうである。私は「えんがわ押し寿司」と「国技館やきとり」で、さすがにふたつぜんぶ食べると多いので、つくねをみつこさんと妹ゆかにひとつずつ配給した。「えんがわ押し寿司」はえんがわ好きにはたまらない逸品だ。脂の乗った身はコリコリと弾力があり、ごはんも甘くて美味であった。「国技館やきとり」は相撲観戦にはなくてはならない定番で、変わらぬ味が駅で買えるとはうれしい限りである。三人とも高崎に着くだいぶ手前で食べ終えてうとうとし始めた。気がついたときには長野手前だった。 「はくたか」は13時14分ごろ上越妙高に着いた。 在来線トキ鉄に乗り換える。改札口正面の土産物店の前には「ウェルモ」くんの大きなフィギュアがいて私たちを出迎えてくれた。見上げれば通路の幟にも「ウェルモ」くんがあしらわれている。ここは上越なのだ。あちこちに「ウェルモ」くんがいるのを見て、巨匠の威光を感じずにはいられない。 トキ鉄の上越妙高は在来線にもかかわらず新しくこざっぱりしている。元は信越本線脇野田駅で、ここから百二十メートルほど東側にあったらしい。新幹線の接続駅として模様替えする際に線路ごと移転してきたのである。 直江津行きの普通電車は13時35分に発車した。のどかな水田地帯を二駅走って13時42分高田に着いた。はじめて降り立つ街並みをきょろきょろ見回しながら、ちんたら歩いていたら大塚さんからメール着信があった。 「いまどこですか? 一四時二○分から高田世界館が見学できるので、間に合うようならぜひ〜」 私のようにせかせか動くのと違って、大塚さんはどっしりかまえて落ち着いて動く人物である。時間の決め方も、「Digmog Coffee」にだいたい十四時ぐらいといっていたので、早ければ十三時半でも、遅れて十四時半でも、ふだんならあまり問題はない。 その大塚さんが「二○分」と分単位で刻んできた。ただならぬ雰囲気を察して、私たちは「Digmog Coffee」に急ぐことにした。しかし高田世界館とはなんだ? 結果的に私たちは十四時一○分ごろ「Digmog Coffee」に着いた。途中、宿に荷物を置いたりしたので余計に時間がかかってしまった。 お店はまっすぐ歩けば高田駅から徒歩一分ほどの裏路地にある。古民家の骨組みを活かしながら内装・外装を現代風にアレンジして珈琲店として利用している。なかなかおしゃれなつくりだ。入口を抜けた正面と右側の壁には大塚さんが手がけたキャラクターグッズを陳列している棚などがある。左側はバーカウンターで、その向こう側で珈琲を煎れたり、豆やグッズを販売したり、テキパキ働いているのはイケハタさんだ。大塚さんはいつも上越にいるわけではないので、「Digmog Coffee」を実質的に切り盛りしているのはイケハタさんということになる。ふつうなら支配人なり店長さんなりのはずだが、あくまで店長は「ウェルモ」くんということになっているので、イケハタさんは副店長らしい。 イケハタさんにごあいさつして、その奥のテーブルのある休憩スペースに、大塚さんと大塚事務所のデザイナーカワムラさんがいた。その横にもう一人若い女の子がいる。誰だろう?と訊こうとしたら、大塚さんがボソッと「娘です」というので私たちは驚いた。「えー、ウタちゃん?」ウタちゃんといったら、まだ背もちっちゃくて小学校に上がるか上がらないかのころ一度会ったきりなので、どう考えても記憶と現実が結びつけられない。いまや立派な大学生だ。 これからカワムラさんとウタちゃんが高田世界館に行くので、大塚さんが一緒に行こうという。そうだった、高田世界館である。どうやら映画館らしい。一九一一(明治四四)年に芝居小屋として開業して、映画館になったのは一九一六(大正五)年。現役で営業している映画館としてはほぼ日本最古なのだそうだ。前の回が終わる十四時二○分から次の回がはじまる十四時四五分までは、映画を観ない人でも一人五○○円で館内を見学できる。大塚さんが珍しく出してきた二○分という細かい時刻は前の回が終わる時刻のことだったのだ。 「Digmog Coffee」を出たのが十四時二○分だったが、六人でちんたら歩いても五分ほどの距離なので、充分に見学することができた。真っ赤な座席。木目の美しい天井の装飾。左右の前方までぐるりとめぐらされた二階席。どれも趣がある。もぎりのおねえさんが忙しい合間を縫って映写室を案内してくれた。いまは使ってないそうだが、ゴツゴツして傷だらけの映写機が二人の老兵のように佇んでいた。みつこさんと妹ゆかは「暑い」といって早々に出てしまった。ここで働くのはたいへんな苦労だったろう。予想外の展開だったが、高田世界館を見学できたのは大きな収穫だった。 映画を観るカワムラさんとウタちゃんを残して、大塚さんと私たちは「Digmog Coffee」に戻り、イケハタさんが煎れてくれたアイスコーヒーで一服した。 |
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