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走れ!バカップル列車 第71号 はやぶさグランクラス |
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四 「はやぶさ・こまち」は仙台〜盛岡間もノンストップである。 盛岡には定刻18時33分に着いた。ここで「こまち」を切り離すため、四分停車する。みつこさんと私はホームに降りて、切り離しシーンを見ることにした。グランクラスのある十号車はまさに「こまち」と連結している車両だから、見学するにも近くて便利だ。 切り離しといってもパッと見たところは「こまち」が「はやぶさ」を置き去りにして秋田に向かって発車するだけのことだ。それでも私たちのほかに親子連れや鉄道おたく数名がその様子を見守っている。 赤い車体の「こまち27号」は時間通り18時35分に発車した。 「あ、閉まってくよ!」みつこさんが「こまち」の後部を指さす。 連結時はぱかんとふたつに割れて開いていた連結器のカバーが、走りながらぱくっと閉まっていくのが見えた。こちら「はやぶさ」の連結器もほぼ同じタイミングで閉まっていく。 そこまで見届けるとみつこさんが「乗り遅れちゃう」と急いで車内に戻ろうとする。 「大丈夫だよ」振り返ると乗降口の蔭から私たちの方をちらちらと見ていたおかっぱ頭のアテンダントさんと目が合った。 「はやぶさ27号」は18時37分に盛岡を発車した。アテンダントさんにお願いして「軽食」を持ってきてもらった。みつこさんは洋軽食、私は和軽食を注文。 みつこさんの洋軽食は、サンドウィッチを中心としたお弁当で、お品書きにはこうある。 GranClass 洋軽食 お品書 サンドイッチ ・岩手県産ロースハム、タマゴサラダサンド ・おいもサラダとクリーミーチーズサンド ・三陸産の秋刀魚竜田揚げナッツソース和え ・フルーツ(洋ナシ、キウイフルーツ) 私の和軽食は松花堂弁当を小さくしたような感じで、おかずと御飯がお弁当箱にぎっしり詰まっている。 グランクラス和軽食 −東北編− お品書き 秋刀魚胡麻風味/小袖伊達巻/カニ風味さつま揚/銀杏串 帆立ひも柚子風味 松茸入り真丈 湯葉あんかけ 煮物 海老真丈湯葉巻、帆立、茄子、蕗、飾り人参 季節御飯(乗車時は栗御飯) 食事中の飲み物は二人ともウーロン茶を注文した。 「すぐおかわりいかがですか? って来るから、もうおなかたっぽんたっぽんだよ」 みつこさんがいう。飲み物はビールやワインなどアルコール類も含めてすべてフリードリンクだ。こちらが頼まなくても、空いたグラスがアテンダントさんの目にとまるとすぐにおかわりを勧められる。東京から数えてもう三、四杯は飲んでいる。 「勧められると、つい頼んじゃうよね」互いに言い合う。「そうなんだよ」 和食のお弁当はそれぞれ少量ながらも種類がたくさんあって、晩ごはんとしても申し分ないごちそうだった。みつこさんも私も十五分ほどで食べきってしまい、食後にはまたお水をいただいた。 東北新幹線の「はやて」と「やまびこ」が基本的に盛岡までしか走らないので、それまで上野、大宮、仙台しか停まらなかった「はやぶさ」も盛岡〜新青森間はこまめに停車する。 いわて沼宮内は二時間に一本の割合でしかとまらないので「はやぶさ27号」は通過。お弁当を食べ終わったあたりで二戸に停車した。 その後は八戸、七戸十和田と各駅に停車。おなかも満たされて窓の外でも見ようかと思うが、すでに日は暮れているしこの付近はトンネルが多いので車窓を楽しむことはできない。みつこさんは再びうとうとしている。私もなにをするでもなくぼんやり過ごす。 「はやぶさ27号」の東京から新青森までの所要時間は三時間十七分だが、グランクラスがあまりに快適なのでその長さをまったく感じない。列車が新青森に近づいたころ、みつこさんが「もっと乗っててもいいね」と言ったぐらいだ。 「はやぶさ27号」は時刻通り19時37分に新青森駅に到着した。 改札口のあるフロアに降りて途中の売店でりんごジュースでも買おうかと思ったら、営業が七時半まででちょうど閉店したところだった。 札幌行きの急行「はまなす」が発車するのは青森駅である。新幹線駅の新青森から奥羽線に一駅乗らなければならない。 在来線ホームに降りるとステンレス車体の特急「スーパー白鳥27号」が停車している。「はやぶさ」と十分ほどの接続で19時47分に発車する。 「これに乗るの?」みつこさんが心配そうに私の顔を見る。 「大丈夫だよ」 新青森〜青森間一駅だけの乗車なら、特急列車の自由席が乗車券だけで乗れるのだ。 自由席車両は二号車と三号車である。三号車に乗り込む。空席が残っていたので二人並んでちょこんと座る。特例で乗車券だけで乗れるとはいえ、やはり特急券を持っていないと仮住まいのような居心地の悪さがある。しかもわずか一駅とあって、どうしてもお尻の半分だけを座席に載せるような座り方をしてしまう。 「スーパー白鳥」は19時54分、青森駅五番線に到着した。 このあと乗る急行「はまなす」は22時17分の発車だから、青森で二時間ほどの時間があく。 計画当初は駅前でゆっくり晩ごはんでも食べようかと思っていたのだが、「はやぶさ」の車内で二人ともお弁当を食べたので、計画を変更してお風呂に入ることにした。駅から十分ほど歩いたところに銭湯のように日帰り利用ができる「まちなかおんせん」という温泉施設があることはネットで調べておいた。 みつこさんと私は一時間ほどのんびりお湯につかって、発車およそ一時間前の二一時二○分ごろに青森駅に戻ってきた。 構内の電光掲示板によると「はまなす」は21時36分に三番線に入線するという。改札口からホームへ向かう跨線橋で「はまなす」を迎えることにした。 一・二番線に降りる階段と三・四番線に降りる階段の間の通路の窓から下の線路を眺める。やがてレール面がだいだい色のライトに照らされて闇夜から浮かんでくる。ライトの光は次第に明るくなり、朱色のディーゼル機関車に牽かれて「はまなす」の青い客車がやってきた。 |
| 第72号 急行はまなすB寝台 一 |
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