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走れ!バカップル列車 第42号 のと鉄道と急行能登 |
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三 JRは毎年春にグループのダイヤ改正をしていて、例年だとその前年の十二月中旬に概要が公表される。 ダイヤ改正といえば新幹線や特急列車が増発されたり、新しい駅が開業したりといった話題もあるが、鉄道おたくにとって気になるのは夜行列車の廃止である。ここ数年は毎年どこかで夜行列車が廃止されていて、こんどの改正ではどの列車が廃止になるか、鉄道おたくの間で話題になってもいた。もちろん上野〜金沢間の寝台特急「北陸」と急行「能登」も廃止候補にあがっている。 その来春三月十三日のダイヤ改正の概要が二○○九年十二月十八日に公表された。北陸方面では「北陸」と「能登」の両方が廃止されることになった。 わかってはいたが、予想外の結果だった。 どうわかっていたかといえば、「北陸」も「能登」も乗車率は悲惨な状況であることだ。私は残業帰りに京浜東北線や王子駅付近から金沢に向かう「北陸」「能登」を見かけることがある。車内を見れば乗客はほとんど乗っていない。平日は「能登」の自由席でさえ、ぱらぱらとしか席が埋まっていなかった。これでは列車が存続していることのほうが不思議なくらいだ。 それでも二○一四年度に北陸新幹線長野〜金沢間が延長開業するまでは、どちらか一方だけでも生き残るのではないか? というのがおおかたの見方だった。実際、私も今回の改正で「北陸」「能登」が廃止になるとは考えていなかった。まして両方が同時に廃止になるとはまったく予想していなかった。 十一月に「能登」に乗ったのも、「廃止されるから」という切羽詰まった状況で乗ったのではなく、「いまのうちに乗っておこう」ぐらいの気持ちで乗ったというのが正直なところだ。しかし「能登」だけでなく、「北陸」も廃止されるというのは、じつに由々しき事態である。私たちはまだ「北陸」に乗っていない。 考えられる選択肢は二つだ。ひとつはきょうから来年三月十二日までのあいだに緊急増便のバカップル列車を走らせる。もうひとつは、私が一人で勝手に行って乗ってくる。このどちらかだろう。 「みちゃん」 「なに」 「来年三月のダイヤ改正で『能登』だけじゃなく、『北陸』も廃止されることになったんだ」 「そう」 みつこさんはなんとなくそっけない態度だ。 「まだ『北陸』には乗ってないんだ」 「ひろさんだけで行って来なよ」 「いいかなあ」 「いいよ」 話が早い。みつこさんは態度こそそっけなかったが、ちゃんと理解はしてくれた。 年が明けて二○一○年二月三日、私は一人、新宿7時30分発の特急「あずさ3号」南小谷(みなみおたり)行きに乗車した。 中央線、大糸線で糸魚川に出て、そこから北陸線で金沢へ。金沢では21世紀美術館を再訪し、夜に駅の近くで回転寿司をたべてから、金沢22時18分発の上り「北陸」に乗車。翌朝6時19分に上野駅に着くという計画である。 往きに中央線、大糸線を選んだのは、ちょっと変わったルートで金沢に向かいたかったのと、大糸線南小谷〜糸魚川間で活躍する旧型気動車のキハ52形が「北陸」「能登」と同じく、こんどのダイヤ改正で姿を消すからである。 「あずさ3号」は11時41分、雪に埋もれそうな南小谷に到着した。東京は晴れていて富士山も見えたが、こちらは雪がかなり深く、いまも粉雪が舞っている。次の大糸線糸魚川行き427Dは11時49分に二番線から発車する。特急が到着したのは一番線なので、二番線に行くには跨線橋をわたらなければならない。 跨線橋のガラス窓から外を眺める。真下はちょうど二番線の線路で、しばらく待てばすぐ下にキハ52がやってくるはずだ。 となりに大きな一眼レフカメラをかまえた若者が立った。この若者も跨線橋のうえからキハ52を撮るつもりなのだろう。 「考えてること、同じですよね?」 若者に話しかけたら、笑いながら「そうです」と返ってきた。二言、三言話しているうちに青とクリーム色に塗り分けられたディーゼルカーが雪まみれになって姿を現した。雪は相当強いのか、発車時刻の49分になってようやくの到着である。ガラス窓をあけると冷たい風と粉雪がすごい勢いで入り込んできた。 キハ52は折り返しの準備が済むと糸魚川行きとなってすぐに発車した。若者も同じ列車に乗ったはずだが、私からは見えないところに乗ったようだ。 |
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